だから清の墓は小日向の養源寺にある。
夏目漱石『坊っちゃん』
気もちの描写のない、そっけない最後の一文。
主人公と清がふたりで重ねてきたものがここで結ばれる。
無償の愛を坊っちゃんにそそぎ続けた清と、
ぶっきらぼうな物言いでまっすぐ受け止めてきた主人公。
「御墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っております」
そう言って亡くなった清は、墓で会えることを少しも疑わなかったろう。
今のいのちの後のことでも、
こころをつなぐ約束になり希望となることもある。
タイトル『坊っちゃん』は、清だけがつかった呼び名。
*
(このふたりを想うとき、太宰治とたけのことをおもいだす)
*出典 夏目漱石『坊っちゃん』より