秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
藤原敏行朝臣
詞書は、「秋立つ日よめる」。
1,000年以上前の人も同じように、
ふとした風の肌触りやにおいに秋の訪れを感じていた。
「おどろく」とは、はっと気付くこと。
ずっと、「秋が来た…!」という喜びを歌によみとり共感していた。
考えてみたら、藤原敏行はそんな感情をのせていないかもしれない。
けれど、言葉で遺してくれたから、ことばや季節や古人とあそべる。
秋が来て、冬が来る待ち遠しさ。
その解禁の扉として、毎年この歌と風を待つ。
*出典『古今和歌集』(巻四 秋歌上)より