しかし、もし人生への最初の稽古がすでに人生そのものであるなら、人生は何の価値があるのであろうか?

ミラン・クンデラ

たった一度の出会いや体験を、
懐かしいと感じることがある。

それを”1”と計上したとき、
とるにたらない1なのか、
かけがえのない1なのか。

*

─Einmal ist keinmal(一度は数のうちに入らない)と、トマーシュはドイツの諺をつぶやく。一度だけおこることは、一度もおこらなかったようなものだ。人がただ一つの人生を生きうるとすれば、それはまったく生きなかったようなものなのである─
(p.13)

*

7月11日、ミラン・クンデラが亡くなる。
初めて読んでから20年。3度目の通読。

─甘美にして哀切。究極の恋愛小説─
(集英社文庫 背表紙より)

この謳い文句がずっと疑問だったが、
そうかもしれない─、と初めて感じた。

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*出典 ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』(千野栄一訳)より