夏嵐机上の白紙飛び尽す
正岡子規
眩しいほど鮮やかな白。空の青。
一瞬で散り、ゆっくり舞う紙。
情景のみ、になにを見るか。
作者の目になりかわる。
身体ごとなりかわり感覚する。
作者ごと画にもなりうる。
*
明治29年の作品。
飛ばされたのが白紙なのは、
子規が療養中だったからか。
私は読書ができなくなると、
『仰臥漫録』を読みかえす。
晩年の日記と絵が清々しい。
*
同年、冬の句。
──いくたびも雪の深さを尋ねけり──
子どもの頃に共感した。
雪降ったら気になるよね、
どのくらい積もったか。
病床の子規は見に行けなかった。
想像して楽しかったろうか、
雪を見られず悲しかったろうか。
*出典 高浜虚子選『子規句集』より